官僚制の逆機能と対策について、わかりやすくプロ社畜が解説します

組織が誕生してから成長し、衰退していくまでの課程において、段階ごとに異なる様々な課題が生まれてきます。今回はこの中の官僚制の逆機能について考えてみましょう

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官僚制の逆機能とは?

官僚制の逆機能とはアメリカの社会学者ロバート・キング・マートンにより指摘された、目的を達成するための手段であった官僚制が、官僚制を維持する事が目的になってしまうことを指します。

組織は目的を達成するために複雑な構造を持っているものも少なくなくありません。専門化・階統化された職務体系、明確な権限の委任、文書による事務処理、規則による職務の配分といった諸原則を特色とする組織・管理の体系を表わし機能しています。これらを官僚制とも呼び現在の会社やお役所などもこの構造を持ち合わせています。

官僚制はヒエラルキー(階層)を持ち合わせています。

その特色として

  • 情報や指示伝達はトップダウン型であり上から降りてくる(上意下達)
  • 形式的な規則に基づいて運営されておいる
  • 組織への貢献度、経験に基づく地位・報酬が与えられる
  • 多くの部門に分かれており、職務が専門化されている

が挙げられます。

社畜モンキ
社畜モンキ

会社は営業・総務・製造など役割が決められています。大企業や大きな役所では自身の仕事がハッキリと決められているのに対し、中小企業などでは製造も行いつつ配達や営業も行うなど横断的です。

組織の官僚制とは?

組織は規模が拡大するにつれ、官僚制を選択します。

起業後まもない頃は経営者(創業社長)のリーダーシップを元に経営を行いますが、組織の従業員数や組織階層・業務が増加するにつれて、やがてリーダーシップだけでは機能しなくなります。官僚制組織とは、高度に専門化された職務が権限・責任を基礎とした、ピラミッド型の組織形態であり、規則に基づいた没主観的判断によって職務を遂行する組織の事です。

その複雑になった膨大な業務と効率性を処理するために取られる官僚制ですが、過度に進行すると没主観的判断が「官僚制の逆機能」を発生させてしまいます。

没主観的判断とは

判断決定(基準)を主観的に判断するのではなく、決まり切った規則を用いて判断する事です。

社畜モンキ
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「前例が無いから判断ができない」がわかりやすい例でしょう。過去に例が無いから担当者自身で判断できない、上長も許可を出して良いものかわからない・・・この場合は判断をする事が自体が目的となってしまう目的置換が行われてしまうのです。

官僚制の逆機能はデメリットなのか?

官僚制の逆機能はデメリットとして認知されています。組織が硬直化し、組織の規模拡大・複雑化や環境の変化に対して適切な対応が困難となります。

以下、主なデメリット

  • 指示待ちが主になり、規則通りの行動しか起こせなくなる(訓練された無能)
  • 過度な専門化と事業の分断による効率性の追求により、個人的な成長が阻害される(組織の硬直化)
  • 前例や、規則通りの行動を強要する(形式主義・画一的行動)
  • 顧客中心のサービスを行わなくなり、組織の有利な判断行動を起こすようになる(セクショナリズム)
  • 革新が阻害される

社畜モンキ
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みなさまの会社には、誰が決めたかわからないハウスルールがありませんか?ホッチキスの止め方が正しくないと書類を通してもらえないなど、不要なハウスルールに従っていることが、まさに逆機能が働いていると言えるでしょう

官僚制の逆機能を指す言葉を取り上げてみましょう。

訓練された無能

訓練された無能とは個々の能力としては非常に優れているが、あまりに規則に固執するにあまり、変化した状況に対応できなくなることです。過去の成功事例から意思決定の規則化・ルーティン化を行うがあまり、予測外の出来事に対応できず、不適切な結果を招いてしまう事を指しています。

社畜モンキ
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訓練された無能の多くは、規則を守ることが目的になっています。目的置換(もくてきちかん)が発生している現場では部署内外で融通が利かず、結果として不満が発生しています。

組織の硬直化

過度の専門化・効率性の進化は組織の硬直化を招きかねません。職務の専門性が高まるにつれて、他者の換えが効かなくなり、結果としてさらなる硬直化を招きます。硬直化が進んだ組織は担当者の能力に依存する形となり、情報取得能力も低下してしまいます。

社畜モンキ
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組織として過去の成功体験が大きいと、その経験を価値の規範として定着するようになります。大手の受注先は〇〇さんしか対応できないから、〇〇さんを役職から外すことが出来ない・・・組織が小さいほど硬直化は見られるかもしれません。

形式主義・画一的行動

前例を踏襲した行動を行うようになります。トラブルや革新的な行動に対して杓子定規(しゃくしじょうぎ)な判断・対応を下し、保守的な組織行動を行ってしまいます。組織の意思決定においても形式主義が働き、現場や組織の判断力が低下してしまいます。

社畜モンキ
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前例がないから判断ができません。前例主義や形式主義に陥った組織では、経験にないことがそもそも判断できないのです。下手な判断をして罰を受けたくない、ある種のセクショナリズムが働きます。

繁文縟礼(はんぶんじょくれい) ・Red tape

官僚制が大きくなるにつれて、指示を出すも文書・書面で行うことが多くなっていきます。そのために支持を行うために文書を作成しますが、文書の形式などの規則が多すぎて次第に文書を作成することが主な職務になってしまいます。

社畜モンキ
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こちらも目的置換が発生しています。ハンコの角度や封の仕方など、指示書や公文書1枚を作成するにも煩雑な規則が細かく多すぎて赤いテープで止める。Red tapeはこの意味を表わしています。

セクショナリズム

組織を細分化することによって視野が狭くなり、組織全体の利益を求めるよりも自身のセクション(部署)の利益のみを追求するようになってしまうこと。自身が怒られたくないなど、自身の評価や利益に直結しないことを後回しにしたり、たらい回しにするようになります。セクショナリズムが蔓延している組織は横の情報共有も少なく、結果として組織に大きな損害を与えてしまう事です。

社畜モンキ
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セクショナリズムが発生している職場は部門間の閉鎖的傾向が現れます。あるいは自身の利益を守るため、派閥や縄張り意識が顕著に表れて、ギスギスとした環境になりかねません。

これらの事が起こってしまうと仕事に対してのモチベーションが下がる理由ともなり、優秀な人材の流出に繋がりません。官僚制の逆機能が発生し、硬直化した非効率的な組織は、どのように改善していけば良いのでしょうか?

官僚制の逆機能への対策・組織構造の柔軟化

官僚制の逆機能とは、官僚組織が過度に規律的であるために、官僚組織自体の目的から逸脱してしまい、業務の効率性や柔軟性が低下する現象のことを指します。ヒエラルキー構造、非人間性、官僚制の逆機能による組織の硬直化を克服するために、組織の動態化・柔軟構造など、様々な管理技法が工夫されています。

業務の見直し

官僚制の逆機能が生じる原因の一つに、業務の過剰な規制があるため、業務の見直しを行い、必要な業務に必要な規制を設けることで、無駄な規制を取り除くことができます。

職務の権限委譲

官僚制の逆機能を解消するためには、官僚組織内での権限の委譲を行い、現場レベルで判断を行えるようにすることが必要です。このようにすることで、現場のニーズに合わせた柔軟な対応が可能となり、業務の効率性が向上するでしょう。強いトップダウン型の組織では協力なリーダーシップのもと、思考停止に収まる人も多くなるため、現場レベルでの考える力を養うことが必要となります。

リーダーシップの改善

官僚制の逆機能を解消するためには、リーダーシップの改善が必要です。リーダーは、組織のビジョンを明確にし、メンバーのモチベーションを高め、業務の進行をスムーズにするために必要なサポートを行うことが求められます。

常識的な判断

官僚制の逆機能を解消するためには、常識的な判断が必要です。業務の進行に必要な手続きや手順を適切に判断し、最適な判断を行うことが重要です。また、常識的な判断を行うためには、関係する人や組織とコミュニケーションを取ることが必要です。

組織構造のフラット化

官僚化が進んだ組織には、いわゆる「怒られたくない」「必要以上の職務を負いたくない」との感情が蔓延し、自身の職務以上の働きを行わなくなります。トップダウン型の式でも、トップにお伺いを立てることが職務となっているため、訓練された無能化が起きています。縦割り型の組織をフラット化されることによって、組織の階層が少なくなり、社員や従業員の自立性や主体性を活性化させることが出来ます。フラット化することで、柔軟かつ神速な意思決定を行いやすくなります。しかし、フラット化は個々の職務が増加する面もあり、中間管理職の統制範囲拡大が前提となります。

社畜モンキ
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適切な支援を怠ると個々の不満や不安・疲労が蔓延し、組織の弱体化を招きかねません。働き方改革もあって中間管理職の負担は増すばかりで、後任の育成に時間を割けていない現状も問題視するべきでしょう。

プロジェクトチームの導入

縦割り式の組織形態の中にヨコ串を入れる事で、部門の垣根を越えた意思の疎通を行う事が出来る、プロジェクトチームを導入することがあります。社内の製品開発・システム開発などの複数の部門から専門的知識を有するメンバーを集め、臨時的に編成される組織です。

プロジェクトメンバーは当該プロジェクトを達成することが目的であり、本来所属する部門を離れ課題点の解決に注力します。これらのチームは個々の専門性に加え、高い問題解決能力、コミュニケーション能力の高い人材など、これらの人材を適切に選出する必要があります。

また、チームが円滑に活動できるように、経営陣は全力的にサポートする必要があります。チームメンバーの仕事量の調整、経営資源の確保・捻出、問題点・課題点に対してのヒアリング・意見交換など、プロジェクトを後押しし成功へと導くことも必要となっています。チームへの参加メンバーは成功体験もさることながら、自律的・主体的な経験値の獲得も期待が出来ます。

社畜モンキ
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成功体験や数字的な面もさることながら、組織内外において顔の利く人材になることが最も大きなことでしょう。成長を期待する若手にぜひ体験していただきたいものです。

まとめ

今回は官僚制の逆機能を取り上げてみました。昨今では情報活用により組織の動態化に期待を寄せている起業も少なくありません。

企業の戦略に合わせて業務プロセスを根本的に見直すリエンジニアリングの動きも見られます。この動きによって組織下部からの意見や考えを取り入れやすくしたり、会議を減らしたりなど企業体質の改善・改革を行う事で新たな競争力を構築するきっかけにもなり得ます。他企業の優良事例を分析し取り入れるベンチマーキングを活用する事で、このリエンジニアリングも効果的になります

組織硬直の克服は官僚制の逆機能の克服ともなり、新たなイノベーションを生んでいくことでしょう

それでは皆様よい社畜ライフを!

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