働く人のほとんどが関わる労働基準法。しかし、学校や社会で詳しく教えてもらっていないと言っても過言ではないでしょうか?今回はプロ社畜が解説いたします。
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労働基準法とは?
労働基準法とは
労働条件に一定の基準を設け、労働者を保護することを目的とした法
労働関連の法規には様々な法律が関わっています。労働条件や労使関係、労働福祉などさまざまな場面で労働者を保護しているとも言えるでしょう。
労働条件の最低基準を定める日本の法律で、日本国憲法第27条第2項に基づいて1947年に制定されました。労働者が持つ生存権の保障を目的として、労働契約や賃金、労働時間、休日および年次有給休暇、災害補償、就業規則などの項目について、労働条件の最低基準を定めています。
日本国憲法第二十七条
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
③ 児童は、これを酷使してはならない。
一般的に労働者の立場は弱く、使用者が勝手に賃金や労働時間の条件を定めてしまうと、労働者は不利な条件で働くことになります。それは、憲法の生存権が保証されず、憲法違反であるとも考えることが出来ます。
労働条件の原則
第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすものでなくてはならない。
労働基準法 第一章 第一条より
労働基準として、賃金面や定最低限のルールが、定められています。休みやただ働きなどをさせてはいけません、といった当たり前の事を意味しています。
労働条件の決定
労働条件は労働者と使用者(会社)が対等の立場で決定するものです。
この労働条件として
- 労働協約・・・労働組合と使用者が労働時間などについて結ぶ協定。
- 就業規則・・・会社で労働者が働く上で守るべき職場規律や賃金、労働時間などの規則
- 労働契約・・・労働者が会社に入るときに使用者と取り交わす規約
基本的な考え方として、使用者(会社)と労働者は対等な立場であり、双方の合意の上で決定なされています。現実は会社側の方が強いので、あえてこの様に明記されているとも考えられます。
労働基準法と就業規則
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作り、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
使用者は規則の作成・変更において一方的に行う事が出来ず、労働組合や労働者の代表に意見を聞かなければなりません。規則は労働者に周知させる必要があります。
労働基準法と労働契約
労働契約とは、
労働者が使用者に労働力を提供し、使用者がこれに対し賃金を支払うことを約束したもの。
有期労働契約には雇い止めなどの規制のため、規定などが定められています。同一雇い主の反復更新により、5年を越えた場合は労働者の申し込みによって、無期労働契約に転換できるとされています。しかし、反復更新を行うと、よっぽどの理由が無い限り契約を反故にする事は出来ないため、使用者側は慎重になります。
労働基準法が定める法廷労働時間・休憩・休日など
労働時間とは労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間の事です。
労働基準法が定める「法定労働時間」と「休憩時間」
1日の「法定労働時間」
- 1日の法定労働時間・・・・休憩時間を除いて8時間と定められています。(上限)
- 1週間の法定労働時間・・・原則40時間(休憩時間含まず)
特例として1週間44時間まで認められている事業もあります。中小企業によく見られますが、法定労働時間を守ることができない場合は36協定を結んでいます。
36協定についてはコチラ
変形労働時間制
仕事の性質上、特定の日・週において労働時間が前出の8時間、40時間内におさまらない場合は、変形労働制をとることが出来ます。
- 1年単位の変形労働制・・・1年以内の一定期間を平均して、1週間の労働時間が40時間を超えない限り、ある日・週の労働時間が1日8時間・週40時間を超えても良い制度。
変形労働制は多くは年間単位(1ヶ月~1年)の、労働に採用されるため、1年単位での繁忙期・閑散期の定時に反映させる場合が多いです。事前に定められていない期間において図のような場合(月・火)は時間外が発生しています。
労働基準法の休憩・休日
休憩時間は原則
- 6時間を超え、8時間以内労働の休憩時間・・・少なくとも45分以上
- 8時間を超える労働の場合・・・少なくとも1時間以上
労働基準法34条より
上記の時間を勤務時間中・自由に一斉に与えなければいけません
休日は
- 週に少なくとも1回
- 例外として、4週を通じて4日以上の変形休日制も可能
使用者が休日に労働者を働かせる事は出来ません。しかし、業務の都合上どうしても休日に働いてもらう事がある場合は、事前に36協定を結んで所轄労働監督署長へ届けておく必要があります。
働き方改革と残業と有給休暇
働き方改革関連法が2018年に成立し、大企業では2019年4月から、中小企業においては2020年の4月から適用開始されています。法案の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」であり、法改正の下に様々な動きが見られています。
働き方改革が始まった狙いは、労働人口の減少と生産性の低さがあります。長時間労働の是正と多様な働き方の実現を目標とし、競争力を高めていこう!という政策なのです。
時間外労働の上限設定
働き方改革の大きなポイントである残業の天井設定です
残業時間の上限は原則として月45時間・年間360時間までとする
平均的な年間勤務数240日(月20日勤務)で割ると、1日あたりの残業時間が1時間半となります。実質残業ゼロ法案とも言われており、今まで残業代が支給されいた方にとっては、収入が大幅に減少する危機的な状況です。
時間外労働による割増賃金
1日8時間・週に40時間を超える労働がある場合(残業がある場合)は従業員側と36協定を結び、所轄労働監督署長へ提出する義務があります。加えて、使用者は労働者に対して賃金を割り増しで支払わなければいけません。
36協定を結び従業員側が了承している場合でも、労働時間の上限が設定されています。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と給仕労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1ヶ月あたり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることが出来るのは、年6ヶ月が限度
36協定を結んでいたとしても、法律を守る事は義務です。1年を通して常に時間外労働と休日勤務の合計時間は100時間未満、2~6ヶ月間の平均時間は80時間を超えていけません。
2023年からは中小企業への猶予も無くなるので、時間外労働がほぽペナルティの様な意味合いになってきます。加えて、深夜勤務の場合は深夜労働の割り増し25%も加算されます。
高度プロフェッショナル制度
職務の範囲が明確で一定の年収(年収1075万)以上を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする業務に従事する場合に、労働時間・休憩・休日・深夜割増の規定を除外して働くことの出来る特定高度専門業務・成果型労働制の事。
高度プロフェッショナル制度を適用させるには
- 年間104日の休日を確実に取得させること。
- 労働者本人の同意、労使委員会の決議(4/5以上の決議)を有すること
が必要となります
成果報酬型の働き方であり、残業などの概念もなくなります。コンサルタントや弁護士、プロデューサーなどの結果を求められる働き方と成ります。
年次有給休暇の取得義務
働き方改革の成立により、救急休暇年5日の連続取得が義務になりました。
有給休暇に関して過去にブログでまとめてあります。ぜひご覧下さいね。
労働基準法違反になるかもしれないハラスメント
労働基準法ではハラスメントを禁止しています。
ハラスメントとは?
ハラスメントとは人に対する「嫌がらせ」や「迷惑行為」・「いじめ」等を指し、人格や性別等に対し行動や言動で不快感・不利益を与える事です。
パワーハラスメントやセクシャルハラスメントが有名ですが、スメルハラスメント(におい)やモラルハラスメントなど様々名言葉が生まれています。いずれも個人の尊厳を傷つけるような意味合いを指します。
ハラスメントに当たる可能性のある主な言動・行動
- 性別や身分での仕事内容の差異
- 解雇予告のない一方的な解雇
- 休憩や休日を与えない
- 残業代や各種手当ての未払い
- 法定外の長時間労働
など
ハラスメントは概ね法令違反であることも多く、男女雇用機会均等法などは男女の均等な機会と雇用を指した法令でも認知されています。
パワハラ防止法である労働施策総合推進法とは?
職場におけるパワーハラスメント(以下パワハラ)の防止措置として、大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月より労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行されました。
厚生労働省「あかるい職場応援団」実施の調査データ(平成28年)によると、実際にパワハラに関する相談を1件以上受けた企業は回答企業全体の49.8%。実際にパワハラに該当した企業は回答企業全体の36.3%となっており深刻な事態になっています。
引用元:厚生労働省「あかるい職場応援団」データで見るハラスメントより
パワハラは経営上の課題として認識・対応している企業が多く、8割近い企業が対策などの取り組みの重要性・必要性を認識しています。
パワハラに対する主な対策方法
- パワハラに対する方針を就業規則に明記し周知させる
- 社内でパワハラに対する研修会や勉強会を開き、啓発を行う
- 社内相談窓口や産業医の設置と相談者・被害者の配慮を行う。
など
被害者を守ることと再発の防止・加害者の処分が必要です。社会労務士や弁護士等の助言を受けることで速やかに措置を行う必要もあるかも知れません。
まとめ
労働基準法において基本的な事項を挙げてみました。
学校や会社で教わらないこの基準法ですが、一通りさらりと撫でておくだけでも、使用者側(会社)と対等にお話が出来るかと思います。
怖いですよ、自分の部下がある日いきなり、、、終業規則において必要記載事項内の、、、と話し出したら、、、そんなためにも知恵や知識を獲得した社畜を目指して励んでいきましょう。
それではみなさま、良い社畜ライフを!